子宮筋腫
子宮筋腫とは
子宮の筋肉にできる「こぶ」のような良性腫瘍で、婦人科において多くみられる病気のひとつです。女性ホルモン(エストロゲン)により大きくなり、反対に閉経後には自然に小さくなることがほとんどです。
できた場所によって区分されており、子宮の内側にできた筋腫は粘膜下筋腫、子宮の筋肉内にできたものは筋層内筋腫、子宮の外側にできたものを漿膜下筋腫と言います。
子宮筋腫の症状
もっとも多い症状は、月経量が多くなる過多月経と月経痛です。その他、下腹部の張りやしこり感、頻尿(トイレが近い)、腰痛などの症状があります。
症状は、筋腫の大きさと発生部位によってさまざまであり、粘膜下筋腫は小さくても症状が強く、月経量が多くなります。反対に漿膜下筋腫はある程度大きくなっても症状が出にくいのが特徴です。
また子宮筋腫は不妊症の原因となったり、流産や早産の原因となることもあります。
子宮筋腫の治療
1手術療法
- 子宮全摘術
挙児の希望がない方には子宮全摘術をおすすめします。
子宮全摘術後は子宮を全部摘出するため、ふたたび子宮筋腫による症状で困ることはありません。卵巣は摘出しないためホルモンバランスの崩れも心配ありません。 - 子宮筋腫核出術(筋腫だけをくり抜く方法)
将来、挙児の希望がある方は筋腫だけを取る手術を行います。
これらの手術の多くは、腹腔鏡や子宮鏡を使った内視鏡下手術で行います。大きさやできた場所によっては開腹手術となります。
2薬物療法
- 対症療法(貧血や痛みに対して鉄剤や鎮痛剤を服用する方法)
- GnRHアナログ製剤:偽閉経療法(女性ホルモンを抑えて子宮筋腫を小さくする治療)
GnRHアナログ製剤を使用した偽閉経療法は、月経が無くなり、また子宮筋腫が半分程度まで小さくなります。このため過多月経や月経痛などのつらい症状がなくなり日常生活が快適となります。
しかし、治療により女性ホルモンが少なくなるため、更年期症状が出る可能性があり、半年間しか治療を行うことができません。治療を中止するとしばらくして子宮筋腫はまた元の大きさに戻ってしまい、症状が再度出現してきます。
このため、手術前に一時的に使用する場合や、閉経に至るまでの一時的治療(逃げ込み療法と呼ばれています)として行います。 - 低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(低用量ピル)
子宮筋腫を小さくする効果はありませんが、経血量が減少し、月経痛が緩和されるため症状の軽減が期待できます。
当クリニックの治療方針
経膣・経腹超音波検査やMRI検査を用いて、子宮筋腫の大きさ、発生部位、数を正確に把握します。そのうえで、年齢、妊娠・出産の希望、症状の強さ、子宮筋腫の大きさや発生部位などを総合的に判断し、最適な治療法を提案します。そして手術が必要な場合は、連携する基幹病院へご紹介させていただきます。
子宮筋腫は多くの方に認められますが、必ずしも治療が必要なわけではなく、経過観察のみで十分な場合も多くあります。気になる症状がある場合、あるいは子宮頸がん検診と合わせて、まずは超音波検査を受けていただくことをおすすめします。
子宮内膜症
子宮内膜症とは
子宮内膜症とは、本来子宮にしか存在しないはずの子宮内膜の組織が、子宮以外の場所(卵巣、腹腔内、腸など)にできる病気です。
月経時期になると子宮以外の場所にできた子宮内膜も剥離・出血しますが、血液や内膜を体外に出すことができず、体内に溜まります。その結果、卵巣内に血液が貯留しのう胞を形成(チョコレートのう胞)したり、出血による炎症が原因で骨盤内臓器の癒着が起こり、さまざまな症状を引き起こします。
子宮内膜症の症状
月経痛、月経時以外の腹痛、排卵痛、過多月経などが見られます。この他、性交痛や排便痛も特徴的な症状です。また不妊症につながる可能性もあります。
子宮内膜症による痛みは、初経後数年間はひどくなかったものの、年齢とともにだんたんと増悪するという特徴があります。この痛みが、QOL(生活の質)を低下させてしまう最大の症状です。
子宮内膜症の治療
子宮内膜症の治療方法には、薬物療法と手術療法があります。年齢、妊娠の希望、症状の強さ、病変の重症度などを考慮して選択します。
子宮内膜症は、慢性疾患であり、長期の治療が必要となります。このため、QOLの改善・維持に十分な効果があり、副作用が少なく、経済的負担の少ない治療法が理想的と考えます。
子宮内膜症のホルモン治療
- 低用量エストロゲン・プロゲスチン配合錠(低用量ピル)
子宮内膜の増殖を抑制し、痛みの原因となるプロスタグランジン産生を抑えることで効果を発揮します。OC・低用量ピルと同種の薬剤のため、避妊効果、月経前症候群の症状緩和効果、にきび・肌荒れに対する効果を併せ持つ薬剤です。
- 黄体ホルモン療法(ジェノゲスト)
子宮内膜症病変に対する効果が高く、痛みに対して非常によく効く薬剤です。また副作用の心配が少なく長期に使用することが可能な薬剤です。
子宮内膜症の重症度が高い方、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合錠の効果が不十分な方におすすめの治療法です。 - GnRHアナログ療法(偽閉経療法)
人工的に閉経状態をつくる治療法です。黄体ホルモン療法(ジェノゲスト)と同様に、子宮内膜症の重症度が高い方、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合錠の効果が不十分な方におすすめの治療法です。
月経を止めるため効果は確実ですが、6か月以上の連続治療ができません。効果が出た段階で、他のホルモン療法や手術療法への切り替えを行います。
当クリニックの治療方針
当クリニックでは、経膣・経腹超音波検査やMRI検査を用いて、子宮内膜症の程度、卵巣の腫れの有無などを正確に診断し、そのうえで、症状の強さ、年齢、妊娠・出産の希望、病変の重症度などを総合的に判断し、最適な治療法を提案します。手術が必要な場合は、連携する基幹病院へご紹介させていただきます。
子宮内膜症は、再発する頻度が高いことや、卵巣チョコレートのう胞はまれにがん化することもあるため、長期にわたる経過観察と治療が必要です。
最適な治療法を一緒に選択していきましょう。
子宮腺筋症
子宮腺筋症とは
子宮内膜に類似した組織が子宮筋層の中にできる病気です。
子宮腺筋症の病変があると、その部分の子宮筋層が肥厚し子宮が腫大するため、月経量が過多となり、月経痛を伴うなどの症状がでます。
女性ホルモン(エストロゲン)が子宮腺筋症を進展・増悪させるため、閉経するまで進行していく病気です。
子宮腺筋症の症状
月経痛、過多月経がもっとも多くみられる症状で、その他不正出血、月経時以外の腹痛や腰痛がみられます。
また、不妊症や流産・早産の原因になることもあります。
子宮腺筋症の治療
子宮腺筋症の治療方法には、薬物療法と手術療法があります。年齢、妊娠の希望、症状の強さ、病変の重症度などを考慮して選択します。
子宮腺筋症のホルモン治療
- 黄体ホルモン療法(ジェノゲスト)
痛みに対して非常によく効く薬剤です。また副作用の心配が少なく長期に使用することが可能な薬剤です。
比較的重症の方や低用量エストロゲン・プロゲスチン配合錠の効果が不十分な方におすすめの治療法です。 - GnRHアナログ療法(偽閉経療法)
人工的に閉経状態をつくる治療法です。黄体ホルモン療法(ジェノゲスト)と同様に、子宮腺筋症の重症度が高い方、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合錠の効果が不十分な方におすすめの治療法です。
月経を止めるため効果は確実ですが、6か月以上の連続治療ができません。効果が出た段階で、他のホルモン療法や手術療法への切り替えを行います。 - 低用量エストロゲン・プロゲスチン配合錠(低用量ピル)
子宮内膜の増殖が抑制され、経血量が減少し、月経痛が緩和されます。
OC・低用量ピルと同種の薬剤のため、避妊効果、月経前症候群の症状緩和効果、にきび・肌荒れに対する効果を併せ持つ薬剤です。 - 黄体ホルモン放出IUS(ミレーナ®)
子宮内に挿入し、黄体ホルモンを子宮の中に持続的に放出することで、子宮内膜の増殖を抑制し、経血量を減少させたり、月経痛を緩和する効果があります。一度挿入すると最長で5年間効果が持続します。
当クリニックの治療方針
当クリニックでは、経膣・経腹超音波検査やMRI検査を用いて、子宮腺筋症の程度を正確に診断し、そのうえで、症状の強さ、年齢、妊娠・出産の希望、病変の重症度などを総合的に判断し、最適な治療法を提案します。手術が必要な場合は、連携する基幹病院へご紹介させていただきます。
子宮腺筋症は、閉経まで長期の治療が必要となります。このため、QOLの改善・維持に十分な効果があり、副作用が少なく、経済的負担の少ない治療法が理想的と考えます。
最適な治療法を一緒に選択していきましょう。
卵巣腫瘍(卵巣のう腫)
卵巣腫瘍(卵巣のう腫)とは
卵巣は子宮の左右に一つずつあり、通常2~3cmぐらいの大きさです。ここに発生した腫瘍が卵巣腫瘍であり、そのうち内部に液体の溜まった袋状の腫瘍を卵巣のう腫と言います。
のう腫内に溜まる内溶物は原因となる細胞の違いにより、漿液性腺腫、粘液性腺腫、成熟のう胞性奇形腫、内膜症性のう胞(チョコレートのう胞)など多くの種類があります。
卵巣腫瘍の症状
卵巣腫瘍の症状には腹部膨満感(お腹が張って苦しい)、下腹部痛、頻尿などがあります。小さいうちは無症状で経過することがほとんどで、症状が出にくい病気です。腫瘍が破裂したり、茎捻転(腫瘍のできた卵巣がねじれること)が起きると突然の強い下腹部痛が出現します。
卵巣腫瘍の治療
卵巣腫瘍が見つかっても、良性を疑うもので、症状が無い場合は治療をしないこともあります。その場合、定期検診にて腫瘍が大きくなったかどうか経過観察をします。
治療は手術療法ですが、症状、妊娠・出産の希望、腫瘍の大きさや種類、年齢を考慮して、手術の適応や方法を判断します。一般的には大きさが5~6cmくらいまでは外来での定期的な経過観察となります。5~6cmを超える卵巣腫瘍は捻転、破裂の可能性なども出てくるため手術を考慮します。またある程度の大きさになると、悪性の可能性も考えなければいけません。卵巣腫瘍手術は悪性ではないことを確認するための方法でもあります。
内膜症性のう胞に関しては、子宮内膜症の項目を参照ください。
当クリニックの治療方針
経膣・経腹超音波検査やMRI検査を用いて、大きさ、腫瘍の種類、悪性腫瘍の可能性がないかどうかなどを正確に診断し治療の必要性を検討します。
手術に関しては、腹腔鏡下手術が選択される場合がほとんどです。開腹手術に比べると体への負担が少なく回復が早いため、入院期間が短く、退院後も比較的早期に仕事復帰することが可能となります。このため、卵巣腫瘍の手術が必要と判断した場合は、腹腔鏡下手術を行うことができる総合病院へご紹介します。
卵巣腫瘍は小さいうちは症状が無いことが多く、子宮頸がん検診の際に偶然見つかることも少なくありません。まずは子宮頸がん検診と一緒に超音波検査を受けることをおすすめします。
婦人科 診察内容
- 月経に関する悩み
- 子宮筋腫・子宮内膜症・ 子宮腺筋症・卵巣腫瘍
- おりもの・かゆみ・ 性感染症
- 挙児希望(不妊治療)
- 更年期障害
- 低用量ピル・緊急避妊